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III フィリピン現地調査

III-1 支援の全貌

III-1-1 支援の実績

フィリピンに対する支援は、フィリピン経済の中長期の確実な経済成長を支える点に重点をおいて実施された。フィリピンでは調査を行った他の2国のようにアジア通貨危機の影響をそれほど受けず、短期的な経済対策を行う必要が少なかった。一方、経済成長率は低く、一貫して失業率は高い水準に止まっている。

また、フィリピンでは、これまでに7件(2000年度に6件、2001年度に4件)の特別円借款事業の実施が決められている。

  • LRT1号線増強計画(II)(222億円、2000年4月7日借款契約、事業内容は後述)
  • カマナバ地区洪水制御排水システム改良計画(89億円、2000年4月7日借款契約)
  • ミンダナオ・コンテナ埠頭建設計画(86億円、2000年4月7日借款契約)
  • イロイロ空港開発計画(147億円、2000年8月31日借款契約)
  • スービック港湾開発計画(164億円、2000年8月31日借款契約)
  • 第二マグサイサイ橋及びブツアン・バイパス建設計画(35億円、2000年8月31日借款契約)
  • 中部ルソン高速道路建設計画(419億円、2001年9月14日借款契約)
  • 地方開発緊急橋梁建設計画(185億円、2002年3月28日日借款契約)
  • 海難救助・海上汚染防止システム増強計画(94億円、2002年3月28日日借款契約)
  • 北ルソン風力発電計画(159億円、2002年3月28日日借款契約)

一方、ノン・プロジェクト借款の貸付は1件であった。

  • メトロマニラ大気改善プログラム・ローン(363億円、1999年3月10日借款契約、部門調整借款、事業内容は後述)

無償資金協力の分野では、アジア通貨危機に関連してノン・プロジェクト無償を供与している。

  • ノン・プロジェクト無償(20億円、1998年度交換公文)

その他に、1997年度から2000年度の間に有償、無償、技術協力に関して以下の支援が行われた。

  • 円借款(第23次年次供与13件1357億円1999年12月28日借款契約、第24次年次供与9件546億円)
  • 無償資金協力(1997年度69億円、1998年度59億円、1999年度101億円、2000年度62億円)
  • 技術協力(1997年度75億円、1998年度77億円1999年度72億円)

III-1-2 日本・フィリピン関係者へのインタビュー

フィリピンの援助受け入れの窓口となっている国家経済開発庁(NEDA)と大蔵省(DOF)に対してインタビューを行い、以下の意見を得た。

  • フィリピンではインフラを整備するための資金が不足している。日本の援助は投資的な資金を確保するためには欠かせないものとなっている(NEDA)
  • 金額は円借款ほど大きくないが、ノン・プロジェクト無償も有効に機能した。資金の返済の必要がないという点で、ノン・プロジェクト無償も重要な支援スキームである。ノン・プロジェクト無償では肥料などGeneral Commodityの調達にあて、見返り資金はコンピューターを全国の学校に設置する予算にあてた(DOF)
  • 日本の援助(JICAによるフィージビリティ調査の実施から円借款事業への連携)はADBの技術協力(TA)からの事業実施に比較すると時間がかかるように感じる。しかし、調査の質は日本の方がずっと高いし、近年ではフィージビリティ調査から事業実施への時間も早くなってきた(NEDA)
  • フィリピンではインフラを整備するための資金が不足しており、少しでもよい条件で資金を確保したいと考えている。従って随時要請を受け付け、金利が低く返済期間の長い特別円借款の長所が強く発揮される(NEDA、DOF)
  • 特別円借款の候補案件に関して、フィリピン側で特別円借款候補案件を絞り込むことはない。これは特別円借款が随時要請を受け付けているためである(NEDA)
  • これからは、地方政府の能力向上や地方開発に対して日本の支援の拡充を望みたい(NEDA)


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